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「五十肩について」伊藤整形外科醫院 院長 伊藤龍太郎2015.10.12

いわゆる五十肩というのは、五十歳代を中心としてその前後の年配に多発する肩関節の痛みと運動制限を生じる症候群に与えられた名称です。
江戸時代に編集された「俚言集覧」という俗語辞典に初めて記述があります。
日本には、「肩で風を切る」「肩をならべる」「なで肩」「肩すかし」など、肩に関する特有の表現や言葉は多く、日常よく使われています。

しかし、五十肩は余りにもありふれた疾患ですから、かえって重要視されていなかった面があります。
また、医師が7、80歳代の患者さんに「五十肩」と診断して苦笑いされるということがあります。それだけ肩関節は整形外科医にとってもとっつきにくい、理解しにくい関節であるということかもしれません。

五十肩というのは、50歳代を中心としてよく起こり、肩関節を動かすと痛いという疾患です。
肩関節の老化が表に現れた疾患で、いわゆる「肩こり」ではありません。
また、肩関節の疼痛と可動域制限という二大症状があるにもかかわらず、明らかな原因がない場合が多く、レントゲンやMRIなどの画像診断でも明らかな病態が存在しないという摩訶不思議な病気なのです。

原因は、まだこれだという決定的なものはありません。
しかし、ある年齢をピークに強い痛みと拘縮を生じ、その後治癒することもある疾患といえば五十肩しか見当たりません。
それほど特徴的なものなのです。

この五十肩の症状は、急性、亜急性、慢性の三期に分けられます。
「すぐ治ると思っていた」ながら、痛みがおさまらない、肩があがらない、と訴えて来院される亜急性の患者さんが多いです。
痛みは肩関節だけでなく、首すじ、腕の方にまで放散する場合があり、夜間痛の強い方もいます。
その後、疼痛は徐々に軽くなって行きますが、変わって、肩関節の癒着、拘縮による運動制限が始まります。
髪をとかしたり、衣類の脱着など、腕を背中に回すような動作がしにくくなって行きます。

五十肩の治療は、急性期には、まず肩の運動を制限して安静を保ち、痛みを誘発しないように心がけます。
はれや熱っぽさがあるなら、適時冷やします。
病院では、鎮痛消炎のため局所注射を行ったり、ヒアルロン酸の関節注射を行ったりします。
随時、消炎鎮痛剤や湿布を処方したりします。
痛みが楽になってきたら、今度は肩を保温し、血行をよくして肩を動かしやすくします。
特に夜間の保温は大切です。
また、リハビリも随時行います。

五十肩に対しては、予防すなわち治療です。
全身の健康管理と適当な肩の運動に勝るものはないと思います。
もし五十肩になったとしても、発病後四、五日を過ぎた頃から、たとえ少しずつでも肩を動かしてください。

肩こりと違って、五十肩は本来治るものです。
ちゃんと治療するとちゃんと治ってくれます。
あきらめず、放置せず、ちゃんと治療しましょう。

■伊藤龍太郎院長プロフィール■
東海大学医学部を卒業後、同大脳神経外科に入局。東京女子医大救命救急センター、熊本大医学部整形外科入局。肩関節治療で名高い信原病院(兵庫県たつの市)、板橋中央総合病院、大分整形外科病院、大分医師会立アルメイダ病院整形外科などを経て平成21年6月、大分市毛井279-3、メディカルタウンまつおかに「伊藤整形外科醫院」を開院。専門は関節疾患や外傷、慢性疾患。日本肩関節学会に所属。

(2015年10月号掲載)