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「高血圧のお話その4」 すみ循環器内科クリニック 院長 隅廣邦 2015.11.10

最近気温が下がり、血圧が気になる方が増えているのではないでしょうか? そうした方に今回は高血圧治療の基本中の基本である食塩についてお話したいと思います。

はるか昔、海から陸に上がった生物が生命維持を行うために重要なものの一つに海水―食塩(ナトリウム)を体内に保持する必要がありました。しかし、文明の進化とともに食塩摂取量は石器時代の1日1~2g以下から10g以上へと増えてしまいました。このため、高血圧が増え、それに伴う脳卒中や心臓病、腎臓病などが増加していきました。

そのため日本でも減塩の必要性は叫ばれ、表1のように平均食塩摂取量が10g近くまで下がってきました。さらに日本高血圧学会では食塩摂取量一日6g未満の目標を掲げています。この値はたくさんの高血圧患者さんで減塩の試験をして、確実に血圧が下がった値を参考にして決めたものです。減塩1g/日ごとに収縮期血圧が約1mmHg下がったという成績もあります。本来はもっと少ない値にすべきだというのが専門家の意見で、WHOのガイドラインでは1日5g未満を推奨しています。

では減塩するにはどうすればよいのでしょうか? 私たちは加工食品やレストランでの外食、市販の弁当などの食事をたくさん摂っています。しかし、加工食品の栄養成分表示はNa表示で行われており、これを食塩相当量に換算する必要があり、Na量を約2.5倍すると食塩相当量になります。そうした減塩のための個人の努力は重要です。しかし、もともとは食塩(ナトリウム)を保持するように身体ができており、食塩に対する嗜好も強いわれわれが、食塩にあふれた現在の環境で減塩の努力することはなかなか困難と思われます。こうした身体的特徴や嗜好は幼少期に育まれ、その時期の食塩過剰摂取は生涯にわたり高血圧を助長します。そのためには血圧で悩むご本人だけでなく、子供さん、お孫さんすなわち、次世代の予備軍にもしっかり減塩教育を行う必要があります。
家族皆で、減塩を考えていきましょう。

■隅廣邦院長プロフィール■
大分雄城台高校から熊本大学医学部へ進学。同大卒業後、同大代謝内科へ入局。荒尾市民病院、済生会熊本病院、大分県立病院循環器・内分泌内科(旧第一内科)副部長などを経て、平成15年4月、大分市下郡南1丁目1-6、下郡工業団地東側のJR豊肥線地下道横に循環器科・内科・呼吸器科診療の「すみ循環器内科クリニック」を新規開院。日本内科学会、日本循環器学会、日本心血管インターベンション治療学会、日本ペーシング学会、日本高血圧学会などに所属。
問い合わせ/すみ循環器内科クリニック(電話097-504-7700)
(2015年11月号掲載)